厚労省/建築物解体工事の石綿飛散防止策を強化/使用有無調査の要件化検討

 

国交省が推計した民間建築物の年度別解体棟数

 厚生労働省は、建築物の解体等工事に伴う石綿(アスベスト)の飛散防止策を段階的に強化する。労働安全衛生法令で着工前に施工業者に義務付けている石綿含有建材の使用有無調査について、国土交通省が制度化している「建築物石綿含有建材調査者」など専門家による調査実施の義務化を検討する。同調査結果に関する労働基準監督署への届け出規定も厳格化する方向だ。
 建築物解体等工事での石綿飛散防止策強化は、第13次労働災害防止計画(18~22年度)の新規施策に位置付けられた。具体策を9日発足させた外部有識者でつくる「建築物の解体・改修等における石綿ばく露防止対策等検討会」(座長・豊澤康男労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所所長)で話し合う。厚労省は議論の成果を踏まえ、来年中に段階的に省令の石綿障害予防規則を改正する。
 厚労省が同日の検討会に示した石綿飛散防止策強化の方向性として、新たに着工前に行う石綿含有建材使用有無調査の実施者に法令上の要件を定める。現在も国交省の建築物石綿含有建材調査者や日本アスベスト調査診断協会の登録者らによる調査実施を推奨しているが、新たに義務化を検討する。
 併せて石綿含有建材使用有無調査結果の労基署への届け出規定も厳格化し、届け出対象となる調査結果の範囲を広げる。現在は解体等工事時の飛散リスクが比較的高い石綿含有建材が発見された場合に限定しているが、新たに内容に関係なく調査結果全般の届け出を義務付ける方向だ。
 こうした石綿含有建材使用有無調査の実施や調査結果の届け出に関する規定強化の方向性は、同日の検討会で委員からの同意を得た。厚労省は先行して18年度にも省令を改正して対応する方針だ。
 さらに厚労省は来年中に建材の石綿含有率など調べる石綿分析実施者や施工管理担当者の要件化なども検討する。
 国交省によると、民間ストックを中心とする建築物の解体工事は今後大幅に増えていく見通し。2013年度時点で約5・5万棟あった民間建築物の解体棟数は、ピークを迎える約10年後の28年度に約10万棟へと倍増するとみられている。